ぽこぽこうんぽこ

誰かチャンスをください。頑張って自分なりに小説を書いています。

2020年、梅田で旭屋書店を探しているおっさん

 梅田に会社があるので毎日通ってる。通勤で行くし、休みの日に何かあればとりあえず梅田からどこかへ行くので本当に毎日通っている。

 すると、時々人から声を掛けられることがある。

旭屋書店ってどこかご存じですか?」

 そう声をかけてきたクソジジイの話をする。

 

 梅田にはいろいろな観光名所やビルやデカい施設がある。

道や場所を尋ねてくる人も多いのだが、ビルの名前なんか憶えてないし、行き方がどうとか言われてもわからない。

なんとなくで歩いている。

東西南北なんて達者なモノを身に着けて歩いているわけではなく、梅田は上で東梅田は右で福島は左で、みたいな覚え方しかしていない。

 でもなんとなくわかるので「あっちへビューって行って、右にデカいビルがあるのでそこら」みたいなことを一応は言う。

梅田にはデカいビルしかないのに説明になっているのかわからん。

そいつらは感謝を述べて旅立っていく。

梅田を舐めるなよ。

彼らはあっちではなく、そっちの方にビューっと行くまでもなくまた人に声をかける。

彼らは永遠に迷い続けていく。

自分がどこにいるかもわからず、何を探しているかもわからず、わかるかわからないのかもわからない人にわからないことを尋ねて、迷い続ける。

そうして、梅田ダンジョンという俗説は真実味を帯びていくのだ。

 

 さて、旭屋書店はかつて、梅田にあったデカい本屋らしい。

今も梅田地下街店があるらしいけれど。

「とりあえず昔は大阪で専門書などとりあえず本を探すために旭屋書店へ行っていた」と言う話を親から聞いた。

実情は知りません。

 

 ということでおじちゃんと出会った。

旭屋書店ってどこかご存じですか?」

 物腰低そうなおじちゃんは怪しげなマルチの常套句よろしく道を尋ねてきた。

明らかに検討違いな場所で聞き馴染みのない施設を探すために右往左往していた。

梅田のはずれ、北新地駅の横、国道1号線と御堂筋のクロスする歩道橋の上。

しかも、551の紙袋を下げていた。こんな如何にも迷っている人がいるんだ。

旭屋書店という大きい本屋を探しているのですが、どこかわからなくて」

旭屋書店はもうなくなったって聞いていますが、大きい本屋を探しているのですか?」

「いや、そんなことはないはず。旭屋書店に行きたいのです」

いや、そんなことはないはずはないはず。

なぜなら、私はデカい旭屋書店はつぶれたという話を聞いたことがあるし、そしてGoogleMapで調べてもそんな書店は出てこないから。

 

ジュンク堂なら近くにありますが?」

ジュンク堂…?」

ジュンク堂を知らずに、本屋を探している人が梅田にいる。世界は広く。そして私たちが想像もしない不思議に満ち溢れている。旅に出よう。本は君を助けてくれるはずだ。

ジュンク堂も専門書がたくさんあると思いますが、というよりも大阪で本を探すならジュンク堂かと思いますが」

「いや、専門書がいっぱい売っている旭屋書店に行きたいんですよね。若い子は本を読まないから旭屋書店を知らないのかな?とても大きな本屋だったし、君の親世代はみんな本屋と言えば旭屋書店って言うと思うけどね?僕が和歌山から出てきたら毎回通っていたんだよね。それが昔からの楽しみだったんだよね」

 聞いてない話をベラベラと語るおっさん。

和歌山に住んでいて今日は出張で数年ぶりに梅田来て一通り満喫して最後に思い出の旭屋書店に行きたいらしい。

 いや、若い子が本読まないの関係ある?ていうかなんでジュンク堂知らないんだよこのおっさん。

「そのスマホで調べたらどうですか?」

「やり方がわからなくて」

旭屋書店を探す前にスマホの使い方学んだ方がいいだろこいつ。

何が専門書なんだよ。

初めてのスマホみたいな情弱本を専門書と思ってるんじゃないだろうな。

 

 iPhoneの純正マップアプリってなんなんだろうな。

ほぼGoogleMapなのに、ユーザーのほとんどはわざわざGoogleMapをインストールしていて、全く使われない。

そのマップアプリを使って旭屋書店を検索すると明らかに跡地が示された。

「こんなところに、大きい本屋があるとは思えませんが。とりあえず案内します」

 提示された場所はお初天神通りの居酒屋が並んでいる一画。歩いてすぐのところだったので二人で向かった。

 やはり、何もなかった。跡地感はあるが、これからマンションが建つらしい。

「ほら、何もないでしょう?」

「そんなことはないはずなんだけどなあ。まあいいです、別の人に聞いてみますありがとう」

そうやってクソジジイとは別れた。

 

後ろを振り返ると別の人に声をかけていた。

旭屋書店ってどこかご存じですか?」

若い子に声をかけると、GoogleMapを開く。

若い子は旭屋書店の場所を調べる。すると、この場所が提示される。

もちろん、旭屋書店はない。

クソジジイはそれがなぜだかわからない。

もちろん、若い子もなぜ旭屋書店がないのかわからない。

 

①バカジジイの探している旭屋書店はもうない。

旭屋書店が無くなっていることを知らない。

ジュンク堂も知らない。

④梅田の他の本屋も知らない。

⑤世界最強の書店屋こと、Amazonも知らない。

⑥それを知る術も知らない。

⑦それを知る術を教えてくれる人もいない。

⑧それが、旭屋書店の専門書コーナー(情弱スマホ操作指南書)。(①へもどる)

 

そんな者も含め、梅田は全てを食らって今日もデカくなっていく。

覚悟を決めて、飛び込め。

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梅田攻略情報

・地上を歩け。お前の探している施設はだいたい地上にある。地上で目星をつけて地下へいけ。それを繰り返して強くなれ。

 

ジュンク堂あるある

MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店はレジ信じられないくらい混んでいて諦めがち

・オナラでけえ音でこきがち(書店でウンコしたくなる【青木まりこ現象】に加えて店が広いし人口密集度も必然と下がるし雰囲気も良いので)

 

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