ぽこぽこうんぽこ

誰かチャンスをください。頑張って自分なりに小説を書いています。

有益な人生を過ごすためのなんとか

作品について 
 2018年、社会人生活が始まって3カ月ぐらい経ったころ作者はもうしんどくて地元の小説賞に応募したら何とかなるかなあと思って構想を練るもそもそもやる気がひとつもないため原稿用紙10ページくらいで力尽きて自分の才能の限界を知る。ついでに小説を執筆する際の基本的な(明確な決まりがあるわけではない)ルールすらも初めて知る。
 書きたかったテーマは「どこで何をしようとも時間は同じだけ過ぎていく。青春に縛られずに、社会人に縛られずに生きてけ。」

 
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「時間は有限とは言うが、どう考えても俺たちには時間がありすぎる。そうは思わないか?」
暇を弄びすぎた俺は友人に問うてみる。
「お前は暇なんだな。」
もっと言葉をオブラートに包むとかなんかないの?
「包容力を持てよ。」
わけのわからないところで口を開けたせいか、彼は返事を出せずに俺の夜行性でコストパフォーマンスもといカロリー重視の暴飲暴食の限りを積み重ね、そして誕生した腹をつまむ。
「包容力っていうのはお前を包んでいるこれか?」
 こいつは俺と漫才でもするつもりか?だいたい乗り気なのは片方でもう一方は引っ張られるまま始めるというのはだいたいのコンビのきっかけのようはするが。
まあ、話を続ける。
「例えばいつもより五分早く家を出たとする。目的地に向かうには待ち時間の長い信号があったりする」
「あるある。開かずの踏切とか、あれはどうにかならんのか。」
「 それらはいつも通りの時間に出ると全く引っ掛からないのだが、5分早く出たばかりに引っ掛かり続ける。」
「引っ掛からないように毎日改善を尽くしている俺の考えた最強の登校の話か?昔見た教育番組でやっていてなあ。」
「そんで結局学校に着くのはいつも通りなんだ。これは5分早く出たくせに5分のアドバンテージを活かせていないとはいえないだろうか?」
 青天の霹靂、寝耳に水、足元から煙が出る、藪から棒、窓から槍etc…といった表情は全く見せず、
俺の暇を弄びすぎて出した「有益な人生を過ごすための時間論」はこうして世界に革命をもたらすわけでもなく、もちろん自己啓発書としての出版依頼も来ずに潰えた。
ただただ誰しもが経験をする宇宙ってなんなんだろう…って
考えだして昨日の夜は眠れなかったよ~のクソつまらない世間話と同レベルになってしまった。
「俺の時間論をお前らの狭い宇宙と一緒に並べるなよ…。」
「だから俺は7時47分ピッタリに家を出るんだ。」
「「お前は人の話を聞けよ!!!!」」
別に同時に言わんでも、そもそもこの話を始めたのは俺では?
「今の台詞は聞いてたよ。」
適当に返事をして場を和ます。

 しかし、彼の話を聞いてみたところ(聞いてない)俺の出した話というのはなかなかに的を射ているのでは。
「というと、お前は俺の有益な人生を過ごすための時間論を実行しているわけだな?」
「しているのか? 俺は時間がもったいないからやっているだけなんだが…」
 青天の霹靂、寝耳に水、足元から煙が出る、藪から棒、窓から槍etc…類は友を呼ぶとは言うが、お前は俺か?いや、俺は俺だ!我思う故に我あり、故にお前はなし!
自分という存在を再度確認したところで話を続けよう。
「そう思うと、学校で俺はずっと寝ているんだが家で寝ればいいのにわざわざこうして学校に向かう移動時間ってめちゃくちゃ無駄じゃない?」
「学校を寝る場所としてしか認識してないって学生としてどうなん?」
 的確なツッコミ…、わかった。お前はツッコミで俺はボケだ。天下を取ろう。まずは小さい素人漫才大会から…小さなことからコツコツと、師匠も言っている。
「早速、西川きよしを師匠呼びなのは結構だけどな。」
「今のは口に出してないんだが…まあいい。お前は将来何になりたい?」
「わからんから大学に行ってから「でたでたそういうやつ。今の自分(てめえ)の持っている夢を聞いているんだよ、俺は。」
 食い気味に返事を投げる俺は、お前の将来を心配してやってるんだ。
誰にだって将来はある。明日がその将来の一つの景色であるなら今日は、この会話はですら既に思い出の一つでしか無い。
「そうはいっても、俺たちはもう高校生だぞ?夢は見るべきだけどそろそろ現実に向かっていかんとなあ。」
「そのためになんか趣味を始めるとか、興味のなかった分野に足を踏み入れるとかなんかアクションを起こさないとあっという間じゃよ。」
「お前は俺に何を教えてくれようとしているんだ…。だが心に響かんわけではないな」

 こうして俺たちは漫才の道へと足を踏み入れたんだ。

「適当なナレーションで物語を進めようとするんじゃあない。現実を見ろ。」
やはりこのツッコミ力、待っていろ漫才1グランプリ。
「そういえば俺の話した有益な人生を過ごすための時間論の話に戻るがお前はそこまで完璧な登校を構築して、お前は夜な夜なナニをしているんだ?」
「変換ミスのせいで俺が性欲の権化みたいな印象を読者に与えるのは良くない。ただ確かに俺は何をするわけでもなく時間に追われているような、急いているのは間違いないなあ。」
「だから、その生活リズムを改善して俺たちで天下を取ろう。」
「どうしても天下を取りたいようだが、もっといくらでもあるはずだろう音楽でもなんでも。」
 意外だった。最近の若いやつとは言えばやれ動画サイトでチャンスをとか、つまらないやつが面白いやつを見て面白いやつになって楽に生きてぇ~としか考えてないと思ったがこいつには音楽という夢があった。
「やるなら若いほうがいい。ボーカル&ギターはお前で俺はベースだ。夢はでっかく武道館だ。」
「お前の妄想癖は音楽じゃなくて小説にでも活かせば一旗揚げられそうだが、そのことには気づかないんだな。」

 そんな話をしているうちに教室の平均年齢を上げるひとりの男が入ってきて俺は寝た。
 よく寝た。テストが近いやら遠いやらの話がありチャイムがなり、一日はここから始まる。
俺の有益な人生を過ごすための時間論では徹底的に無駄を省くように説いている。前述でもあった通学時間の短縮はまさに基本といえる。
 じゃあわざわざ学校に来てまで寝ているのはどうなのかというと、コストパフォーマンスの話を出さざるを得ない。
 睡眠は全てに於いて優先されるべき事項である。そして睡眠は無駄を上塗りにするという最高のパフォーマンスを私たちに齎してくれる。
 無駄な時間を過ごしに来ているのではない。睡眠をしに来ている…、完璧すぎる。そして俺はそれを完遂したのだ。いや、完睡と表現しておこう…。
「早く帰ろう。お前の有益な時間がロン?のアレがあるんだろう。」
「麻雀でもやるつもりか。」
 有益な人生を過ごすための時間論が今ここで完成してしまったと思っていたが、なんと夢だった。夢で完成してしまうとは、完全無欠。死角がない。
「俺、考えたんだけど勉強を頑張るわ。そんで医者にでも」
「は?」
 お前は俺とバンドを組んでサマーなんとかとかロッキンなんとかで名を馳せるんだが?
「実は小さい頃に弟を亡くしているんだよな。なんか難病とかで、お前が散々探しているきっかけを俺も見つけたっていうことで頑張ってみるわ。」
 止められねぇよなあ。未来に可能性に溢れる若者の夢を、ただ無駄を省くだのなんだの言っているだけでなーんもアクションを起こさない俺がよう…。
「ということは、今からお前は勉強を頑張る。俺はお前を応援する。有益な人生を過ごすための時間は無限ではない!有限だ!走れ若人よ!」
二人でひたすらに走って帰った。
生き急いでいるようだ。
俺たちには明日があり未来がある。
夢を実現することができる。可能性がある。
少なくとも、今は。

 今思うと先のしようもないこのできごとをきっかけにして、彼は常に勉強をしていた。
 噂によると授業というものが学校という機関では毎日開催されていて、
生徒である我々はそれに参加するというシステムがあり彼は毎日欠かさずそれに参加しそして成績を残してきた。
一方で俺は未だに暇を弄んでいた。時間は有限だ。無限ではない、彼は勉強を頑張っているから俺は邪魔をしない。
 というのも、頑張っている人間というのはどうもとっつきにくい。自分と違う世界に居て、しかも籠っているのだから。
 彼と俺とが疎遠になるのはそう難しいことでもなく、必然とかそういう運命すら感じさせないほどに自然な流れではあった。
学校という機関はどうも授業を受けない生徒には優しい対応をしない。
徐々に居場所がなくなってしまった俺は、次第に完睡を行うにはほど遠い環境に身を置いていることに気づく。
ストレスは睡眠の質を奪う。俺は気を病んだ。

 有益な人生を過ごすために、有益な人生を過ごすための時間論を考え出した俺はその論最大のポイントである「完睡」を否定せざるを得なかった。
 結局、この有益な人生を過ごすための時間論こそが俺の人生では無駄に値するものだった。
 有益な人生を過ごすためにはどうすればいいか、考えるまでもなく俺に有益な人生を過ごすためのものはなにもなかった。
 それこそ弟が病気で死んだとか、ある日宇宙から飛来した宇宙人が裏庭で鳴き声を上げているとか、
世界は核の炎に包まれて伝承者の俺は…とかそんなことが有益な人生を過ごすためのきっっかけとしか考えてなかったのではないか。
しかも俺はその話の主人公になる気満々であった。
「普通が一番難しい」よく凡人が言う、だがヒーローも言う。それぞれが与えられた立場で精いっぱい頑張っていることを如実に表している。
 言うならば、彼が勉強を頑張ったきっかけはきっと俺の有益な人生を過ごすための時間論ではなかった(だってこの理論自体が無駄だったから)。
彼は主人公で弟が病気で死んだというきっかけから彼の物語は始まっていて、俺との会話は覚醒前の前日譚の一部にしか過ぎない、誰も気に留めない。
 当時は悦に入って、夕日(家)に向かって駆けだしたものだが。
思い返せば何もないはずの俺は彼に「今の自分(てめえ)の持っている夢を聞いているんだ」という台詞を吐いたことがある。
まあ主人公以外の登場人物が主人公と同じような志を持っていたり、自信を持っていたり、夢を持っていたりするわけはないか。
でも俺だってこの世に生を受けた限りは俺だけの物語ぐらい主人公でいたいよなあ。

 ここで問題。じゃあ俺の夢は何だ?

 「何かを始めるに遅すぎるということはない。」とは最近の夢のない若者に投げる言葉ではなく、
夢を諦めてしまったとか夢があるのに時期尚早だとかの言い訳をして燻っている。
そんな大人に向かって投げられる言葉である。
 よーい、ドン! の合図で夢というゴールテープに向かっては走り出すものの、人によってはそのゴールの前には何故かチョモランマが聳え立っていたりする。
迂回すれば道はあるんだろうが、果たしてそこだけがゴールじゃないのが人生だ。周りを見渡せば川もあるだろうし村もあるだろうし、やっぱり急な谷もあるし。
選択するのは自分次第で。俺は山に登っても楽しくないが世の中には山に登ることだけが生き甲斐の変わり者もいるんだからわからないよな。
 そんな登山家を横目にするでもないが、人によっては一本道のらくらくコースで自転車でもバイクでも好きな乗り物がご用意されている者だっている。
中にはどこでもドアが設置されていたり。ガイドがいたり(そいつはドラえもんか?)。それらは無いにしても道案内が出ていたり。
まあ、青狸ガイドの出すどこでもドアやタケコプターを使用して得た景色が先の登山家が見た景色と差異があるかは知ったことではないが。
そりゃチョモランマがあったら諦めちゃうよなあ。しかし、俺が今一度この夢を見てみるとどうだろう目の前には何もない。
周りには地平線が広がって、太陽は昇るし沈む。すると今度は月が昇るしこれもまた沈む。
なんにも無い場所で空を見上げるとどうしてか迚も綺麗で延々と見続けていた。星にも夜があり朝が訪れる。
 なんにもない大地にただ風が吹いていた。
 夢は寝れば見れるよだとかつまらんことをいうわけではないが、俺は夢を見れなかった。
 若しくは、そんな夢しか見れなかった。はたまた、そんな俺だからこんな夢を見れたのか。
 引き籠りを始めて、こういったことを毎晩考えてしまう。そして朝になって眠気が俺を襲う。
 狭い宇宙を揶揄したが、あれは俺のものだった。つまらん奴の思考が読めると決めつけていたのは、俺自信がそいつ等だったからだ。
 気づけば日は暮れ、また俺には進む道を防ぐチョモランマもドラえもんも出てこない引き出しを開け閉めしていた。
 アクションを起こす、足りなさはここに全てある。
 無気力な若者を笑ってきた。なぜなら彼らは無気力だからだ。有益な人生を歩めるわけがない。
 今思うと俺は鏡を見て笑っていたのだろう。俯瞰して自分を見ることが全くできていない。
 いや、天界から見下ろしているということにすれば俺は滑稽だったろうが、いやいやそれより俺はまだ生きている。
 「何かを始めるに遅すぎるということはない。」なんといい言葉なのだろう。まだ俺の中にも熱くなるものがある。
 辿り着くべきはこの言葉、この考え方であった。

 大学に入ってやりたいことを見つける。そうしよう。
 中学生をやっていた頃も性格は今と変わらず同じことを思っていただろうがしょうがない。
 中学の頃と何も変わらないということで手を打ってもらおう。あとは1000円でも握らせれば中学の俺は黙るだろう。
 そうと決まればアクションを起こそう。今までの俺が出来なかったことを俺はやっている。自身に満ち溢れていた。
 有益な人生に決まりはない。試しにインターネットに答えを探しに行くといい。
答えはインターネットに全て転がっているわけではないんだぞと俺は最近の若者に差をつけてやった。
 俺が起こしたアクションは高校へ行く。なんと一週間も続いた引き籠り生活、もとい頭痛腹痛風邪はこうして完治した。
 いや、させた。若さはそれだけで万能薬になる。
 俺には夢がない。だから夢を探すために大学へ行く、だから高校へ行く。それが夢だ。目標だ。
 意気込みはいい。誰だって何かを始めるときは意気込んでいくものだ。
 恐らく漫才師を目指すものは漫才1グランプリを目指すだろうし、バンドを組むものはサマーなんちゃらとか、ロッキンなんちゃらを夢見るのだろう。
 そこからアクションを起こすか起こさないは人それぞれだろう。
 俺は起こした。若人でありたいと思うなら夜に生きろ。深夜は人を若返らせるぞ。
立てば暴走、群れれば絶叫、口を開けば夢語り。薬物よりもハイになれる。深夜最高!薬物、ダメ、絶対!

 ただ、薬物にしろ夜更かしにしろ、一時の気の持ちようで得た結果はたかが知れてる。朝が俺を常人に戻す。
 俺はドラキュラじゃないから朝も動かないといけない、動けてしまうのだ。

 時は過ぎて俺は「高卒新採です頑張ります。」と職場で挨拶をしていた。周りからは拍手をもらった。
 どうしてこうなったと思ったことはない。正しい生徒として高校へ通う間に俺は気づいた。

 みんなやってるやん…。

 高校へ行くという目標を掲げて高校へ通うだけで周りに差をつけたような気になっていた。
 結果はここにあって、そんで俺はここに立っている。昨今の進学至上主義の傾向から鑑みるに、見る人が見れば笑い、貶し、陰口を叩かれるだろう。
 でも、お前らだっていつかは働くんだろうに。彼らは自分たちが有益な人生を過ごすためには大学に行かなければならないという考えに固執している。
 早いか遅いの違いだ。お前らが大学で何かをしている間俺は社会に出てそれまた何かをするのだ。そうでありたい。
 どちらかというと「何かを始めるに遅すぎるということはない。」が刺さる側に来てしまったのは間違いないのだが、
 それは遅すぎる枠に嵌ってしまったということであるとともにこの言葉を実行するべきタイミングでもある。
 今となっては思い出せないが、当時熱烈に支持をしていた俺の「有益な麻雀で人生を」みたいな話と比べると随分と信用できる言葉である。
 思えば何かに急かされていた気がする。
 夢を得るためにとか、学生という有限の時間に縛られて過ごすうちに。
 当時は有限だったが、今は延々と続く時間を過ごすだけになった余裕から生まれた知見だった。
 セミは地中で数年の長い間を幼虫の姿で過ごし、地上に出て一週間の間に相手を見つけるためこれでもかとミンミン喚く。
 しかし、本当のセミは一週間の倍は生きるらしいし勝手な物知りで決めつけて悲観に暮れる必要は決して無い。
 思ったより長いということは、想像しているよりもチャンスは十分にあるだろう人生もそんなところで、
 だからこそ「何かを始めるに遅すぎるということはない」の言葉は支持されているのだろう。だが、セミにしても俺のこの例えにしても、どちらもうるさい。
 理由はわかっていても騒音は騒音で喧しい。
 多分、ほぼエスカレーターのような流れで高校までの進学をしていくうちに最初の壁である大学の受験を目の当たりにしたときに学生としての寿命みたいなものを感じていたのだろうと思う。
 大学もよくわからんし、その先もよくわからん。少なくとも大学に向けて勉強した今のやる気を無駄にしないためには最善の選択がこれだろう。
ということで世間様にはご容赦を願いたい。
 仕事は面白かったし、先輩も優しかった。
やるべきことが決まっていて、実際それをやることで評価を得る。そして給料という対価で労いを得る。
 このサイクルのおかげで俺は自我を保てた。存在意義を感じた。
まじめな生徒として高校に通っていた頃は思えば強いられるような形でしていた勉強もここでは楽しくできた。
 気づけば居場所はここにあり、疑うことはなかった。求めていたものは夢でも有益な人生を過ごすための指南でもなく、居場所だった。
社会に身を置き始めて数年経ち、幾度も見ているはずの桜が今年も咲き始めた。
 朝、ニュースでも見るかとテレビをつけると春は出会いの季節とはいうがなんの因果か友人が出ていた。
 難病がどうとか発見がどうとかいう話なのでどうやら彼を縛っていたものもこれで昇華されたことだろう。
いや、桜が咲いているんだからこの表現はどうだろうな。
 彼がこのような取り上げをされる程に成長した様に、まだ若い俺は年上の後輩に指導する立場にまでなっていた。
 彼は俺を覚えているだろうか。「努力の天才」という言葉があるが正しく彼を表す言葉だと思う。
頑張っている人間というのはカッコいいものだ。時間はあっという間に流れていく。そこまで努力を重ねたお前は凄いよ。
だが思い返せば高校の俺もよく進学至上主義の雰囲気の中で働くという道を見つけたものだ。
当時見ていた夢では道なんぞは何も無いような気がしていたが、まさにそれこそが妄信で盲信だったわけで、そしてそんな俺はもう死んだ。
彼が勉強して今回のような結果を得たように。互いに人生をなんだかんだ見据えていたのかもしれないな。
無自覚に強いられていた勉強も、学生時代晩年の熱心に目的を持ってやっていたつもりの勉強も同じものだろう。
 俺は充実しているよ。テレビに映る彼に囁いてみる。応答したわけではないだろうが、彼は語りだす目線は俺に向けられている。

「恩人というか、面白いやつがいたんです。有益な人生を過ごすための時間論とかいって。
どうも生き急いでいるような、人生は長いが今(学生)という時間は短いぞとひたすらに語る奴が。
その時に自分を見つめ直したとき弟のことを思い出しました。俺がやらないといけないということもないんだろうけどやってみてもいいかなって。
そのためにやるべきことがたくさんあって、それをやり続けていたらここまで来ていました。」

 どうやら俺が今、お前を見ているようにお前も俺を見ていたようだ。当時、彼が決心を決めたときの俺の行動を振り返ってみよう、あれは正しかったんだと。
「彼が今どこで何をしているかはわかりませんけど有益な人生を互いに歩めているといいですね。」
 社会に身を置き始めて数年経ち、幾度も見ているはずの桜が今年も咲き始めた。
 朝、ニュースでも見るかとテレビをつけると春は出会いの季節とはいうがなんの因果か友人が出ていた。
 難病がどうとか発見がどうとかいう話なのでどうやら彼を縛っていたものもこれで昇華されたことだろう。いや、桜が咲いているんだからこの表現はどうだろうな。
 彼がこのような取り上げをされる程に成長した様に、まだ若い俺は年上の後輩に指導する立場にまでなっていた。
 彼は俺を覚えているだろうか。「努力の天才」という言葉があるが正しく彼を表す言葉だと思う。
頑張っている人間というのはカッコいいものだ。
時間はあっという間に流れていく。そこまで努力を重ねたお前は凄いよ。
だが思い返せば高校の俺もよく進学至上主義の雰囲気の中で働くという道を見つけたものだ。
当時見ていた夢では道なんぞは何も無いような気がしていたが、まさにそれこそが妄信で盲信だったわけで、そしてそんな俺はもう死んだ。
彼が勉強して今回のような結果を得たように。互いに人生をなんだかんだ見据えていたのかもしれないな。
無自覚に強いられていた勉強も、学生時代晩年の熱心に目的を持ってやっていたつもりの勉強も同じものだろう。
 俺は充実しているよ。テレビに映る彼に囁いてみる。応答したわけではないだろうが、彼は語りだす目線は俺に向けられている。

「恩人というか、面白いやつがいたんです。
有益な人生を過ごすための時間論とかいって。
どうも生き急いでいるような、人生は長いが今(学生)という時間は短いぞとひたすらに語る奴が。
その時に自分を見つめ直したとき弟のことを思い出しました。
俺がやらないといけないということもないんだろうけどやってみてもいいかなって。
そのためにやるべきことがたくさんあって、それをやり続けていたらここまで来ていました。」

 どうやら俺が今、お前を見ているようにお前も俺を見ていたようだ。当時、彼が決心を決めたときの俺の行動を振り返ってみよう、あれは正しかったんだと。
「彼が今どこで何をしているかはわかりませんけど有益な人生を互いに歩めているといいですね。」
自分を見つめ直す機会を俺の会話から見出した彼がいたように、今日の彼から俺は機会を得た。
 彼と並ぶ、と表現するのは躊躇われるもののなんか始めてみようとは思う。
一般的に夢は夜に見るものという印象が強いとは思う。
昼に夢を自分に問うというのも、昼寝しか時間を潰す方法を知らなかった当時の俺からすると少しは成長したんじゃないか。
昼は昼で天然の光のおかげでよく頭が回るじゃないか思えば蛍光灯は昼があってこそ夜にも映えるものだ。
昼に空想するといえば白昼夢といった言葉があったが、夜に生き続け現在では仕事一筋の人間が昼の世界を歩いてみると新鮮で、それこそ本当に昼に見る夢という意味では合致しているだろう。
じゃあ彼は毎日このようにして夢を自分に問うていたのか。俺たちはやっぱり似た者同士だったってわけだ。

 でも彼のように小さなことからコツコツと何かを成し遂げるために費やすような時間は今の俺にはない。
ああ、これが学生のうちから人生を見据えるということなんだなあ。やっぱり昼と夜とでは見えている物が違うわ。夜は何も見えねえもんなあ。
 しょうがないから人生の一発逆転ホームランを狙おう。どれどれ、とインターネットに尋ねてみた。
万物の答えは全てインターネットが教えてくれる。
教えてくれなかったらそれは答えのない問いに他ならない。誰にでも無理難題を強いるものではない。
 すると、地元で若人向けの小さな小説の賞が新設されたそうで。どれ私小説でも一筆認めてみよう。
そういえばなんだか誰に褒められたか、俺は小説を書くのに向いてるような気が昔からしている。実際に執筆するというようなアクションを取ったことは勿論無い。
 執筆するとなると、やはり題材が必要で少し考えてもみる。
 しかし思い返してみると、俺は幼少期に東大に合格しようと誓い合った女の子がいるわけでも、クリスタルに導かれた勇者でもない。
少々の落ちこぼれはあったものの高卒で頑張って働いている若人である。
 友人は今でもこうして生きているし。テレビにまで出ているし。なんなら彼はこの発見により人を救うヒーローになる。
そんな彼をここまで導いた言葉を放った俺は差詰めクリスタルとでも名乗っておこうか。でもお前も今では俺のクリスタルなんだぜ。
俺は至って普通の人間だった。じゃあ普通の人間を主人公にするのが俺の小説とはいえるのでは。
 主役の隣にはただ仲が良いだけの、ただ喋るだけの凡人がいる。凡人が喋るのは主役がいるからなのだ。
 ちょうどいい具合の主役に値する人間がこうして見つかったのだから。
 じゃあ主人公は俺で、お前は俺という天才のためにせっせと口を動かしてくれや。
 夢を見ていると強気になるのは当時から変わっていないらしい。
 しかも今では酒もある。俺は無敵だ。誰でもかかってこい。
 今日から俺の見る夢は本当に俺の夢を叶えるアイテムとして使われていく。
 俺がこれから記していく理想の明日という夢は、俺のまだ見ぬ明日の糧となるお前の明日があるのもこれまでの俺があったからだ。
 俺とお前は持ちつ持たれつ。夢中だったせいか気づいたら陽は沈んでいた。どれ、強気になったところで今日はこの辺にしておこう。
 
 なんなんだこれは、目が覚めて文書ファイルを開くと酷い日本語が並んでいた。昼に見ようと俺の見る夢は一時の気の迷いが爆発している。
 人生の一発逆転ホームランなんてそうそう打てるもんじゃねえよ。小さなことからコツコツと、だよな。素面の俺は人に学ぶのだ。
 お前は俺の大切な友人だよ。

 それにしても昨夜は飲みすぎたようだ。

 気分転換に今日は5分早く家を出てみるとするか…。